新台入替作業ってどんな作業をするの?
実は、玉が満タンに入ったドル箱を運搬する以上に大変な入替作業。体力と的確な段取りが必要とされます。閉店後に行われる新台入替作業について説明します。
そもそも、イベントが規制され自粛している状況下において、パチンコ店が唯一堂々と告知できるイベントが新台入替です。と同時に、どこのパチンコ店でも共通する重要な集客方法でもあります。
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最新台であれば、台枠+盤面セットで一台あたり30万円以上が当たり前。
役物や音質などにこだわっている今となっては、40万円以上する台もザラです(牙狼の「金色になれ」は468,000円とか)。
盤面のみの購入(台枠は買わない場合)であれば費用は少し抑えられますし、中古台であれば費用はグッと抑えられますし、グループ店間で台のやりとりをするのであればもっと費用は抑えられますが、新台入替には費用や手間がかかります。
そして、集客を考えて店長など上司が選定し、導入した新台を閉店後の深夜に設置するのが社員の仕事のひとつです。
新台入替作業を進めるにあたり、入替のための準備・外し台の撤去・新台の設置・試し打ちしてデータ取りと4つの流れを踏む必要があるのです。
入替の準備ってどんなことをするの?
入替作業にとりかかるより前に、やっておくと効率が良くなることが多々あります。
入替作業当日、準備なしの状態で「よし、やるぜ!」と思ってもあまりに無謀で、準備なしからのスタートでは3時間かかる入替作業を、準備ありでは1時間30分で終えることもできるのです。
深夜に行われる入替作業ですから、時間との勝負。どんなに入替台数が多くても、翌日の営業までに間に合わせなければいけません。
スムーズな段取りは、時間短縮に大いに貢献してくれます。
以下、多くのパチンコ店がやっていそうな入替前の準備作業を紹介します。
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1.段ボールから出す・袋から出す・養生テープはがし
納品された新台は、段ボールに入っていたり袋に包まれていたりしています。
入替作業の時間に入るときになってから段ボールから出したり袋から出したりするのでは時間がかかってしまいます。
また新品購入した台には、ハンドルや台の角など、ぶつけやすい部分に薄っぺらいテープが貼ってあります。この養生テープをはがすのも案外時間がかかり、そして何よりも見落としがちな傾向があるので、前もってはがしておくと時間短縮になります。
2.台鍵の変更
納品された台の鍵の内部は「流通モード」になっていて、自店の鍵を差し込んでも開きません。
流通状態の台を開閉するために、全国のパチンコ店は共通の「流通キー」というのをもっていて、流通キーを用いて台を開け、自店の鍵を差し込めば開閉ができるように変更します。

パチンコの流通状態の鍵は、上の画像の鍵でメーカー問わず、全て開けることができます。
左右の流通キーで色や鍵の長さが違いますが、鍵の性能に違いはありません。
スロットの流通キーは各メーカーで違いがあり、「メーカーキー」などと呼ばれます。
パチンコの鍵変更
流通キーを用いて納品された台を開け、鍵穴の裏側に付いている小さなポッチを押しながら流通キーを半周させると鍵は「流通モード」から「鍵の内部を変更できるモード」になり、その状態で自店の鍵を差し込んで半周させると「自店モード」になります。これで完了です。
つまり台側の鍵には、基本となる「流通モード」・各店舗の台鍵と合うようになる「各店モード」・この2つを行き来するために必要なあいまいな状態「鍵の内部を変更できるモード」の3つの状態があるのです。
この「鍵のモード変更」がパチンコ台における台鍵変更の主流なやり方です。
慣れれば一台あたり5秒で鍵変更できるようになります。
スロットの鍵変更
メーカーキーにて台を開けてシリンダーそのものを外して自店用のシリンダーを取り付ける「シリンダー取り替え」が台鍵変更の主流なやり方です。
パチンコの「鍵のモード変更」と比べて、シリンダーの取り替えの方が手間も時間もかかります。
シリンダーの取り替えは、パーツの組み換えが必要になったり、あまりに効率が悪いのです。
慣れても一台あたり1分くらいかかりますし、パーツ変更が必要な場合は5分くらいかかることもあります。
「鍵のモード変更」にしろ「シリンダー取り替え」にしろ、台鍵の変更作業を入替より前もってやっておけると時間短縮になります。
3.設置先・移動先の台番号の把握
パチンコ店に設置してある遊技台には1番台・2番台のように番号がふってあります。多くの場合、データランプ(=呼び出しランプ)、もしくはデータランプの近くにふってある番号が台番号になっています。
納品された新台が何番台になるかを把握し、ガムテープや紙などに記入して貼り付けておくことで、入替作業の時間となったときにスムーズに該当する台番号まで新台を運搬することができ、時間短縮になります。
外し台や移動台にも同様に、「外れ」「5番台→8番台」のようなものを準備しておくことで、どの台が外れてどの台が移動するのかを滞りなく把握し、運搬することができます。
4.工具の準備
電動ドリルやバールなど、設置や外しの際に必要になる工具を充電しておいたり、使うときにすぐ使える場所に準備しておくのも効率アップに役立ちます。
使いたい工具が「ない!作業ができない!」となるのを防ぐこともできます。
5.データ配線の取り付け
1回転したら「1回転したよ~」と遊技台は情報を出力します。
遊技台が出力した情報をデータランプやホールコンに反映させるためには欠かせない配線があり、その配線は全メーカー・全機種共通とは言い切れない場合があります。
例えば、むき出しの配線を用いる機種もあれば、特定の形をしたコネクタを用いる機種もあります。
納品された新台に適した配線を事前に取り付けておくことで、設置後に行われる試し打ち(データ取り)をスムーズに終えることができます。
6.中古台のメンテナンス
納品された新台が中古台であれば、盤面が汚れていたり指紋が付着していたりしています。
使われていた台なので汚れていて当然ですが、新台としてお客さんに打ってもらう前にメンテナンスしておくことも当然です。
設置後にメンテナンスするとなると時間がかかるので、事前にお手入れしておくと効率が良いのです。
7.中古台の動作チェック
納品された新台が中古台の場合、遊技に支障が出る故障をしている場合があります。
事前に不都合を把握しておくことで、新台開放までに対応できる場合があります。
また、入替設置前に動作確認をしておくことで、なんの不安もなく入替作業に没頭できます。
これらの作業を前もってやっておくとスムーズな入替作業に入れます。
外し台の撤去作業
既に遊技台が設置され尽くしたホールに新台を設置したいのですが、何かの台を外さなければ新台を設置するスペースは生まれません。
多くの場合、外される台は既に稼働が見込めない古い台なのですが、まずはこの「外し台」を撤去しないと新台を設置することができないので、この撤去作業から始まります。
遊技台はネジ4箇所・もしくはクギ4箇所で留められているパチンコ店が多く、逆に言えば台を固定しているネジやクギを取り除けば台を外せる状態になります。
しかし、遊技台には色々な配線が接続されていて、その状態で台を外そうとすれば配線が断線してしまいます。
外し台の故障や配線の断線などを防ぐために、撤去作業には守るべき順番があります。
~パチンコ台の撤去作業の順番の一例~
1. 外し台の中の玉を抜く
台の中に玉があると、ふとした時に床に玉が転がってしまい、作業に支障をきたします。
また、玉を抜くことで台の重さが軽くなるメリットがあります。
2. あらゆる配線を抜く
データ配線、サンドハーネス、台のコンセントなど、遊技台に接続されているあらゆる配線を抜きます。
抜くと表現するよりは、島の中と台との接続を切り離す、という表現でしょうか。
この作業を終えることで、すぐにでも・少し後にでも、とにかくいつでも台を外すことができます。
3. 台本体を外す
パチンコ台は、台の大枠が島にクギなどで固定され、その大枠に台本体を取り付けている形です。
外す際は逆に、固定された大枠から台本体を外す形になります。
台本体なので重たいですが、床に落とさないように慎重に外していきます。
4. 大枠を外す
大枠を島に固定しているクギやネジなどを取り除けば、大枠は簡単に外れます。
大枠を外せば、遊技台1台分を設置できるスペースが生まれるので新台を1台設置できるようになります。
ここまでの作業で、パチンコ台1台の撤去が完了です。
新台の設置作業
外し台を撤去して生まれたスペースに、今度は新台を設置していきます。
とりあえずは外し台の撤去作業の順番を逆から進めていくと、設置作業は進行できます。
~パチンコ台の設置作業の順番の一例~
1. 大枠を固定する
大枠を島に固定します。
パチンコ台の場合、傾斜という「傾き加減」を気にしながら、クギやネジで固定していきます。
2. 台本体を取り付ける
固定した大枠に、台本体を取り付けます。
台本体なので重たいですが、床に落とさないように慎重に取り付けていきます。
3. あらゆる配線を接続する
台のコンセント、サンドハーネス、データ配線など、遊技台に接続するべきあらゆる配線を接続します。
台のコンセントをつなぐことで台の電源が入ります。
サンドハーネスを接続することでサンドとつながり、さらに玉を飛ばせるようになります。
また、データ配線を接続することでデータランプやホールコンへと情報を飛ばすことができるようになります。
4. アウトボックスの位置を調整する
打った玉をカウントするアウトボックスの位置が悪いと台の開閉ができなくなります。
また、位置が悪いと打った玉数を正確にはカウントしない場合があるので、適した位置へ調整する必要があります。
5. 台への玉の補給を確認する
台の中の玉が空っぽだったり少なかったりすると、正常であれば台を閉めたときに島から一定量の玉の補給がされます。
台を閉めたときに玉の補給がされない場合、補給装置の位置など不都合がある証拠なので、微調整を施します。
ここまでの作業で、パチンコ台1台の設置が完了です。
試し打ちでデータ取り
これまでに掲載した作業を入替台数分だけ完了して、入替作業終了!!…とはなりません。
新台設置後にもう一つ、時間のかかる作業があります。それが、データを取るための試し打ちです。
新台だけでなく、移動台でも試し打ちをするパチンコ店が多いです。
試し打ちの目的は、設置した新台がどのくらいの1000円スタートか、などの確認もありますが、そもそも接続した配線が有効に機能しているか(=データランプやホールコンに反映されるか)、の確認でもあります。
試し打ちといっても、お客さん同様にスタッフが着席して打つのではなく、大体のパチンコ店は、自動的に玉が発射されるように細工をしてスタッフは上皿に玉を補充するだけです。
こうすることでスタッフ一人あたり5台~10台を同時に担当することができます。
新台や移動台は、玉詰まりなどのエラーが発生しやすいので、スタッフは各台の上皿に玉を補給しながらエラーの発見・対処をします。
また、大当たりが発生すればハンドルを「右打ち」に固定するなど、必要に応じて対応します。
パチンコは1分間に100玉発射でき、多くのパチンコ店は試し打ちに3000玉~12000玉(30分~2時間程度)を費やして、通常時のデータ・大当たりラウンドのデータ・電サポ中のデータの3種類の状態のデータを収集します。
試し打ちで収集したデータを元に新台開放前に調整を施して、新台開放当日にお客さんへ開放する、という流れです。
その他の作業
設置台に変更がある以上、台横のスペック情報などの冊子をはじめ、機種プレートなど、装飾も変更になります。
このような軽微な作業は女性スタッフに担当させるパチンコ店が多いですが、作業終了後の確認をしてあげる必要があります。
また、データランプに機種名が出る場合、以前設置してあった台の名前が出るようではお客さんが困惑してしまいます。
以前の台の履歴データが残っていた場合も同様です。
新台を設置して試し打ちが終了しても、このように確認する項目は沢山あります。
翌営業日に、遊技台付近にクギやネジが放置されていた経験もあります。
これではスマートな営業とはとても表現できないので、しっかりと幅広い視点・思考で確認をする必要があります。
入替作業で大変だったこと
移動台を含めると400台近いリニューアル入替を指揮したことがあります。
さすがに自分たちだけではどうにもならないので、業者に協力を依頼しました。
いかに早く正確に作業を終了させるかが重要な中、自分の店のスタッフだけでなく業者の動きまで把握しなければいけなかったのは大変でした。
入替作業の指示は常に僕が出していた時期があったのですが、このときばかりは時間の経過やプレッシャーを感じて逃げ出したくなりました…。
閉店が11時、すぐに作業を開始して帰宅が朝6時なんてことも何回かありました。
確認不足の失敗談を1つ。
前準備の中古台の動作チェックのとき、コンセントをさした瞬間に台裏から閃光が走りました!
パチンコ台は24Vですが、トランスが機能せず100Vのまま投入してしまい、閃光が走ったあと、電源が入ることはありませんでした。
その後の話は割愛します…。
元社員からのアドバイス
ここまで散々、入替作業の順序を掲載してきましたが簡単な話、台を外してそこに台を設置するっていうだけの話です。
その過程でいくつか気をつけるだけ。
台数が多いと大変ですが、20台程度の入替だったら思ったより大変ではないはずです。
別に一人で全部やる訳ではないし、自分以外にも信頼できる同僚・スタッフがいます。
協力しあって、なるべく早く入替作業を終了できる段取りを見つけると良いと思います。